所有しているビルを貸している入居者から、「賃借権の登記」を要求された場合は、賃借権の登記ができる場合と、できない場合があります。借主は、貸主と賃貸借契約を締結した際に、建物の所有者に対して、当然には賃貸人に対する登記請求権を有しているわけではないからです。
賃借権が登記できた事例の一つとして、大手飲食店が、駅近くのビル一棟を借りた際、敷金の額を含めて賃借権を登記できたことがありました。
一般的に、賃借権の登記が可能になる例は、1棟の建物全てに賃借権を有している、賃借した建物が区分所有建物であり区分所有権が認められる専有部分についての賃借権を有している場合、と言われています。
借地借家法では「建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。」と規定されています。
なお、借主が賃借権の登記を求めてくる場合には、通常の賃貸借契約では禁止事項の「賃借権の『譲渡又は転貸』を許容する特約」の登記も、併せて求めてくる場合があります。借主は、賃借権の譲渡又は転貸をなすに当たっては、その都度貸主の承諾を得ることなく、自由に行うことが可能になるからです。